「ネット建て」と「グロス建て」

中小企業の社員だから電通のような大手広告代理店と仕事をする機会などほとんど無いものだけれど、先代社長の側近だったおかげでそんな機会にも恵まれた。
それ以前のモルガン・スタンレーの子会社時代、本社経営企画部課長として地域では大手の広告代理店だった名鉄エージェンシー(現:電通名鉄コミュニケーションズ)と仕事をした経験がとても役に立った。
広告業界の仕組みも知らない当時の僕は、それまでの中小広告代理店と同じ感覚で商談に臨み、何度も恥をかきながら多くのことを学ぶことができたからだ。
広告業界には「ネット建て」と「グロス建て」という取引条件が存在する。
大手広告代理店の見積書には原価に相当する製作費用と、広告代理店の利益に相当する管理費(マージン:名称は各社によって違う)が明示されている。
広告代理店のマージンが20%という取引条件で製作費用800万円の広告の場合、グロス建ての場合は製作費800万円、広告代理店のマージン200万円でグロス1000万円の仕事、ということになる。
同じ条件でネット建てだった場合は、製作費800万円、マージン160万円、グロスで960万円と、40万円も違う。
このような「イロハ」も知らずに商談に臨んでいた僕は、「このど素人が…」という蔑みを暗に感じながらも、それまでに「知ったかぶり」がどれだけ深い墓穴を掘るのかを経験してきていたから、厚顔無恥を決め込んで情報を吸収していた。
さて、この「グロス建て」と「ネット建て」を今さら持ち出して何を思っているのかと云うと、「消費税」についてである。
消費税は売価に税率をかける「ネット建て」だけれど、消費者が支払うのは税込のグロスである。
だから消費者の利便性のために「税込価格表示」があり、「本体価格表示(税抜価格)」も存在して混乱する。
もし仮に消費税が販売価格の構成比率何%という「グロス建て」だったらどうだろうと、夢想してみたのでした。