「沈黙」に逃げ込むな

「子曰く 君子は言に訥にして、行ないに敏ならんと欲す」
この、論語の「訥言敏行」が「不言実行」の元となった故事成語かと思われる。
「王たる者は軽口をたたかず、実践的であるべきだ」という意味だろう。
英国の格言に「沈黙は金、雄弁は銀」というものがある。
時として、黙ることが雄弁に物語るよりも、有効な場合は確かにある。
江戸時代には「言わぬが花」という洒落た台詞が、巷で流行り定着した。
価値観を共有する者に対し、敢えて説明を省略して相手の想像に任せることで、強い共感を招く効果とともに、仮に誤解があっても責任を回避できる。
言った本人が理解していなかったり誤解があっても誤魔化す効果があるから、軽佻浮薄なくせに自尊心の強かった江戸っ子には重宝な台詞だっただろう。
「余計なことは言わない」は、現在でも有効な保身術ではある。
しかし情報化社会において、何かを産み出すのは時として「炎上」であり、どんな場合でも「沈黙」はただの空虚である。