来たるべき未来は「資本絶対王政」か?

「この程度の最低賃金も払えない企業は潰れて然るべき」という主張は、「コロナ禍なんだから人を集めるビジネスが潰れても仕方がない」に似て、当事者ではないから言えるんだろうな。
でも当事者は生き残るために、あらゆる方法を必死で探すものなのだ。
単に最低賃金を引き上げるのなら、多くが指摘するように経営者は非正規雇用を切り捨てて、そのぶん正規雇用の労働負担が増えるだろう。
「賃金」の前に「雇用」ではないだろうか。
もともと知的労働の対価は単純労働に比べて遥かに高いし、生産工学的な技術革新は、これからも労働集約型産業から人間という労働力を排除していくだろう。
この先人間が稼げるのは「生産」や「流通」ではなく、「設計」や「取引」となっていくだろうけど、この分野は才能に独占されやすいから雇用の数は減る。そしてその才能も人工知能に置き換わる時期が到来したら、残るのは「投資」だけとなる。そうなれば、資本を持たない人間は稼げない。これが資本主義のゴールなのだとしたら、制度的に補完しなくては人類社会は崩壊してしまう。来たるべき人類社会は、資本が「何も出来ない人」を養う社会主義か資本絶対王政なのかも知れぬ。
ともあれ、社会保障と富の再分配を無視した資本主義は、最悪のファシズムなのだ。資本主義において、利益率の高い産業ほど社会コストを負担する制度は不可欠だと思う。
低所得層の所得を増やすために最低賃金を上げるのなら、キャピタルゲインに対する税制の見直しや富裕層の節税対策に対する課税強化など、富の再分配を無視しては実効性に乏しい。