偉大ではないが舐めちゃいけない英国

この時点で英国では、一日5万人のCOVID-19新規感染者が出ているけれど、医療崩壊は起きていない。
新規感染者数がその半分である日本では、自宅療養を強いられ亡くなる人がでるほど、医療は逼迫している。
太平洋戦争当初のマレー半島での日本軍快進撃、英国の誇る戦艦プリンス・オブ・ウェールズ撃沈、「英軍史上最大の屈辱」と云われ13万人の捕虜を産んだシンガポールの陥落などの華々しい戦果の名残で、戦時中でも米軍に比べ英軍弱しと舐めていた風潮があって、それが今でもかの国を「ブリカス」と見下す文化に繋がっているのかも知れないけど、インパール作戦ではその英軍に日本軍はボロ負けし、無数の屍を残して総崩れしたんだけどね。
外交上の傷跡を今でも世界中に残す「ブリカス」だけど、犠牲をものともせず、犠牲の原因を究明して劣勢を跳ね返す粘り強さは今でも健在かも知れない。
東洋方面の英軍や中国国民党が日本軍に反転攻勢できたのは米国の武器貸与法のおかげだけど、もうひとつ、英軍の日本軍研究の成果でもあった。
それによると、日本軍の攻撃はマニュアル化されていて、戦闘力を失うまで同じ戦術を繰り返す傾向にあり、それに対策すればダメージを防げること。日本軍では兵隊個人の感情や判断力が無視され、指揮官の命令で完璧に統率されていることが強みだけれど、指揮官を失うと個人では行動できない烏合の衆となるので、戦闘では将校下士官を狙い撃ちにすることで無力化できる。(将校下士官は軍刀を帯びているので判別しやすい)などなど…。
これは「集団活動では強く個人としては弱い」という、戦後の日本人のステレオタイプの起源となったものだね。
例外的に、孤島で死地に陥った日本軍が乏しい機材に創意工夫を加えて強力な防衛陣地を築いたことを、米軍海兵隊が高く評価しているけれど、敗戦国日本が産業を建て直し経済大国になった素地を見る思いがする。
ともあれ、多大な犠牲を出してもへこたれず、敵を研究して対策を模索し、兵站を築いて反撃の機会を伺う英国と、緒戦の戦果に酔って慢心し、敵の変化に対する研究を怠り兵站を軽視して苦境に陥るや、指導者は負けを認めず対策は忍耐だけとなった日本の、それぞれの残像がコロナ対策にも表れているのかも知れない。