介在者を抜く「中抜き」と介在者が抜く「中抜き」

介在者を抜く「中抜き」
最終消費者相手のビジネスにおいては、流通経路で中間業者を省くことで仕入れコストを下げ、店頭価格を下げる「価格破壊」によってダイエーの中内さんが成功を収めて以来、流通経路の簡素化がすすんで消費者物価の安定を支える要素となってきた。
むしろ消費者向けの商品やサービスは、高価であることに価値のあるもの以外は店頭価格がデフレ気味に推移してきたので、BtoCビジネスは給与水準が低く、働く環境の劣悪なブラック企業が多く、そして法人寿命も短い傾向にある。
ロシアへの経済制裁のしっぺ返しのような物流の停滞と、米国の金利政策の煽りを受けた円安は、消費者向けの商品やサービスを提供する業界にとっては、店頭価格のデフレ脱却の好機を得たのかも知れない。

介在者が抜く「中抜き」
いっぽうで、法人同士の取引では伝統的な「談合と人脈」が温存されているため、業界人でもよく解らない「影響力のある人」が受発注経路の中間に介在し、「影響力」を担保している政治家や補助する反社会的組織が一緒になってその恩恵に浴している。
サブスク系の資本がドラマ制作に大きな予算を投じても、日本では仕事をしない人の中間搾取が激しく、製作現場に降りてくる予算は大きく減ってしまうそうだ。
そのため予算のわりに惨めな作品が多く、エンタメで韓国に大きく差をつけられている要因のひとつにもなっているらしい。
大規模な建設やイベントでも、実際に仕事をする法人の上に元請けがあり、その階層が多層化しているので、孫請けとか曾孫請け業者が手にする予算は、当初のものよりかなり減じている。
東京オリンピックにまつわる贈収賄スキャンダルも、「談合と人脈」という日本文化が産んだ中間搾取の問題であり、「影響力のある人」が利権をコントロールできてしまう構造の問題だろう。
日本の生産性を向上するには、「談合と人脈」ありきのビジネス習慣を捨てなければ無理だ。