「ルサンチマン」とはニーチェの用語。被支配者あるいは弱者が、支配者や強者に対して蓄積してきた憎悪や妬み。この心理のうえに成り立つ同情や共感。
封建時代から日本の民衆に文芸や芸能によって培われた「判官贔屓」という心情も、ルサンチマンを土壌としてきたと思う。
さらに戦後日本において、労働争議とか反戦運動などの左翼活動に対して民衆の共感が生まれたのも、「権力=悪」という単純化した図式をマスメディアが喧伝していった成果であり、ルサンチマンの商品化の成功例だったと言えよう。その後、左翼思想の具現化だった共産国家権力や左翼思想勢力の支配が、日本を支配する権力よりも更に「悪」だという認識が広まったけれど、それでも各方面における弱者への同情と共感が、詳細を知らず旗幟を決めてしまう民衆(有権者)の判断を左右している。
社会の平衡を保つものとして、ルサンチマンを悪いものとは思わないけれど、民主主義の中で「決め手」となってしまう民衆の印象操作に、この心理が「悪用」される点は要注意なのだ。