明治新政府の命題のひとつとして、徳川幕府が締結した不平等条約の解消というものがあった。
大日本帝国は建国から40年あまり、関税自主権を持っていなかったのだ。
軍事力の評価向上によって日本は「列強」と認識され、帝国主義時代の世界においてようやく関税自主権を確立できた時に帝国議会で制定されたのが『関税定率法』であり、明治も終りに近い1910年(明治43年)の事であった。この100年以上前に作られた法律は、今も生きている。
関税定率法は当時の帝国議会の「良心」を示すかのように、関税は世界的な統一基準に準拠して決めましょう、という主旨となっていて、新憲法の精神にも合致するものとしてそのまま生き続けている。
しかし、実際の貿易は二国間の商取引以外も含めた外交取引が深く関わるので、世界的な統一基準という理想はなし崩しとなっていき、現在は関税定率法の下に数多くの下位法令を制定し対処しているのが現実である。
WTOを否定し二国間での交渉オンリーと明言するトランプ大統領の登場で、大日本帝国議会が決議した関税定率法という理想は、ますます形骸化していくのだろう。