100日後に死ぬワニ

漫画家/イラストレーターのきくちゆうき氏のツイッターで「100日後に死ぬワニ」という4コマ漫画が毎日掲載されている。
ちなみに、これを書いている今日は「死まであと17日」という回だった。
擬人化されたワニ(たぶん人間なら童貞で20代前半の男性という設定)の他愛のない日常が淡々と描かれている4コマ漫画なのだけれど、4コマ目の下に「死まであと〇〇日」とテロップが入る。
ワニ君がバイト先で知り合った友達や恋心を抱いた相手のワニ嬢も、もちろんワニ君本人も、誰もワニ君が死ぬなんて考えもしない。
ありふれた青春の日々が小さな悲喜を交えて描かれているだけの、ある意味で退屈な漫画ではある。
しかし、毎回のラストに「死まであと…」というカウントダウンが入ることで、なんでもない日常に潜む悲劇とか無常感を想起させられる。
この手法は「巧い!」と僕は感心した。
どのようなラストになるのだろうか。

もしも「100日後に奇蹟を起こすワニ」というタイトルだったとして、そして「奇蹟まであと〇〇日」というカウントダウンテロップだとしたら、奇蹟のアイデア次第ではあるけれど、「100日後に死ぬ」よりも作品のインパクトははるかに弱かっただろう。
自分が死ぬとは露ほどにも考えていない主人公が、ずっと続くと信じている平凡な青春を生きているからこそ、そしてその予兆は漫画世界のどこにも無く、彼の寿命を知るのは漫画世界の外側に居る読者だけだからこそ、この作品は独自の味わいを醸し出している。