同人誌活動におけるライバルは、わらべあきひとだった。
彼は僕と同じように筆名を変える人だったので、ここでは僕にとって最も印象に残る時代の筆名を採りあげておく。
僕が「ぱんぷきん」を創刊する前年、1973年の暮れに文芸同人誌「あっぷあっぷ」が創刊された。
藁半紙にガリ版刷で袋綴じという昭和四十年代らしい体裁の本だったけれど、僕の身近で初めて作られた同人誌だった。
この本を作った編集長が、のちに「わらべあきひと」の筆名を持つことになる。
表紙および挿絵は岬とおるが描いている。
岬とおるは「ぱんぷきん」では盟友だったけれど、同時にライバル誌のお抱え絵師でもあった。
この関係は高校・大学を経て岬とおるが亡くなるまで続いた。
僕と岬とおるとわらべあきひとは、終生の創作仲間だったのだ。
童話同人誌「チロンヌップ」はわらべあきひと入魂の傑作同人誌であり、岬とおるがもっとも多く作品を残した本でもある。
その「チロンヌップ」誌にわらべあきひとが書いた童話「魔女とか云われて」の挿絵は、岬とおるの傑作のひとつだと思う。
僕のタッチは童話向けではないけれど、わらべあきひとへのオマージュを描いてみた。