アフガニスタンでタリバン優勢

米軍をはじめとするNATO諸国の支援で精強な国軍を養成したはずのアフガニスタンが、タリバンに負ける。この20年間はなんだったのだろう。
ナポレオン戦争以降に芽生えたナショナリズムは1民族1国家の方向性を産んだものの、オーストリア=ハンガリー帝国解体後のバルカン半島やオスマン帝国領の混乱で見られるように、諸民族居住地域が入り組んでいたり、国家としては自立できない規模の部族レベルでの対立など、言語や宗教や文化の差異を平和的に抱合できる政体を、人類は発明できずにいる。
米国やオーストラリアのように先住民を滅ぼすか、ヒトラーが試みたような「民族浄化」なのか、現在なら中国共産党のような弾圧しか方法は無いのか。
欧州連合は果敢な挑戦だと評価できるけれど、英国の脱退に見られるように、開明的と思われる国家でさえ貧すれば自国優先である。
タリバンが勝利したのち、今度は部族間闘争が始まるだろう。それは親イラン派と反イラン派の闘争だろうか。そして内戦に超大国が関与して、再び代理戦争の戦場と化すかも知れない。
アフガニスタンが部族の自治を優先しつつ、公共福祉の共有を築けるような連邦国家になることが理想なのだけれど、チトーというカリスマが亡くなった途端に分裂したユーゴスラビアを思い出す。
内戦の勝者は常に酷薄な独裁権力であり、その強権無くして内戦後の領土を治められないことは歴史が示しているけれど、部族間差別と貧富格差が再び内戦を呼ぶのも歴史的な流れである。
甘い理想論など、考えるだけ無駄なのだろう。一時的な感傷で対岸の火事を眺める自分を恥じる。