安倍晋三氏を追悼する

安倍晋三氏の首相時代を回想してみる。
外交面では、軍備強化や軍事同盟強化を明確にする「積極的平和外交」によって、日本の国際的地位を高めたような印象を国民に与えたことは、彼の政治方針の勝利だった。
日本国民が国外からの承認欲求に飢えていることは、「外国に評価される日本」というコンテンツの人気からも窺えるけれど、戦後の日本知識階級が長い間ナショナリズムを危険思想として否定してきたことによるフラストレーションと、隣国前大統領が展開してきた稚拙な反日政策が日本社会における国民感情を右傾化させたことが、安倍政権を6度の国政選挙に連勝させ長期政権となった要因だったと思う。
内政面では、小泉政権の時からの新自由主義経済を継承せざるを得なかったから、対処療法的政策に終始するのは、選挙を前提とし国民の支持を保つためには仕方が無かったことだろう。
新自由主義的なグローバル経済の時代となって、米国の巨大資本による圧力や中国の国家主導資本に対抗する必要があったから、従来の護送船団方式や官庁指導による国内産業保護政策を捨て、許認可の撤廃や民営化の流れを継承せざるを得ない。
しかし、経済成長が国民を豊かにするのは発展途上の局面だけであって、それ以降の経済成長は富裕層を更に豊かにするだけであり、貧富格差を拡大するだけである。
安倍晋三氏はおそらく、現在の世界経済の環境化で国民を経済的に豊かにすることの限界を察知していて、国民の価値観を精神的な豊かさ指向にシフトしたいと考え、その精神的支柱のスタイルを、彼が密かに憧れていた郷土の英雄たちが築いた、明治新政府のような天皇国家像に求めたのではないだろうか。
彼はその道筋を自分の人生で作りたいと急いでいたけれど、本来は国民のコンセンサスを形成するために時間を必要とする案件であり、彼のやりかたはいささか性急で強権的だったために、少なくない反発や憎悪を受けることになった。
しかも彼は、志半ばでその命を奪われてしまったのだ。
以上はなんのエビデンも無い、僕の印象だけで作った安倍晋三氏の総括です。
ご冥福をお祈りします。