戦争は勝者の論理で飾られる

論介(ノンゲ)は豊臣秀吉による一度目の朝鮮出兵(文禄の役)で、秀吉軍が捕虜とした朝鮮婦女子を侍らせて戦勝の祝宴を開いている際に、酒に酔った日本の武将を誘惑して崖に誘い出し、武将を道連れに飛び降りて亡くなった。亡くなった場所には祠が建てられ、祖国の英雄として祀られている。
日本の戦国時代には、武田信玄が攻め滅ぼした相手の家臣遺族や領民を人身売買した記録が残っているし、他の戦国大名においても似たり寄ったりの悪逆非道が習慣化し、家臣や同盟豪族の軍事参加に対する褒美としてなんの罪の意識も無かった。秀吉の朝鮮出兵は、このような価値観の戦国軍隊の海外派兵だったから、朝鮮半島の民衆は世界史に残る酷い蹂躙を受けた。
平和ボケした当時の朝鮮に攻め込んだ豊臣秀吉も、現地で悪逆非道をおこなった加藤清正たち戦国武将も、現代日本では英雄として人気がある。いっぽうで、正規軍同士の戦いに敗れ夫が戦死した敗戦側未亡人が、敵の将校を誘い出して死の道連れにするのは、現代の欧米流の価値観ではテロなんだろう。
こういう「無力な者の健気な抵抗」をテロだと断じる独善が、紛争地域での一般市民殺戮に繋がっている。