「結構」とは、もともと「構造」という名詞であり、動詞としては「作り上げる」という意味だった。
転じて「作り上げられている」「完成度が高い」「出来栄えが良い」という肯定的な形容詞となった。
いっぽうで一般的に「結構です」と言う場合、「間に合っています」「これ以上は不要です」という意味になる。
主語が省略される日本語の難しいところだと思うけど、この場合の主語は「私」であり、「この件について私は既に満ち足りた気分であり十分に満足しているので、これ以上の追加は興ざめするばかりで不要であり望みません」という意味である。謝絶であり、相手の提供しようとする行為や物品に対して、「出来栄えが良い」と褒めているわけではない。
あまり使わないけれど「貴方は結構です」と言った場合、「貴方は素晴らしい」と褒めているのではなく、「私にとって貴方のような人材(友人)は既に十分であり必要としていません」という柔らかい拒絶だろう。
「結構、毛だらけ、猫、灰だらけ。ケツのまわりは糞だらけ」と寅さんが言っていたように、褒め言葉としても儀礼的で空疎な言葉、それが「結構」なのだ。
そんな具合に、この作品も単に「月光仮面」というタイトルのダジャレに留まらない、「結構」という曖昧さへの皮肉だと考えてみると面白い。