65歳でサラリーマン人生を終わった機会に、身辺整理をすることにした。今までも転居のたびに荷物を減らす目的で処分はしてはきたけれど、愛着のある物や思い出のある物は捨て切れなかった。今回は人生の節目でもあるので、今までにない覚悟で断捨離を敢行したのだ。
結構なボリュームで残っていたのが、高校時代から保管してきた書簡や年賀状。若い頃の手紙には、今読むと赤面してしまうような相談などが書き送られていて、送り主からすれば世の中から抹殺したいものだろう。だから処分することにする。友も僕も「青かった」のだ。年賀状については、今でも交際が続いている人とはネットで繋がっているし、今に至って疎遠な人とはもう繋がることも無いだろう。ホームセンターで手動式のシュレッダーを購入し、2004年に逝ってしまった友の年賀状だけを残してすべてを廃棄することにした。
ただ、捨て切れなかった思い出がもうひとつあった。高校1年の3学期、1974年の僕の誕生日にもらったバースデーカードである。
贈ってくれたのは、当時クラスメイトだった女子であり、この記事に書いたように今でも夢に現れる人である。彼女の誕生日に僕は、入魂のイラスト作品をパネルにして贈った。これはそのお返しである。(カードと一緒にスケッチブックとシャープペンを貰ったと記憶している)貰った時には物凄く感激したけれど、「プレゼントしたから義理でくれたんだ」と当時の僕は自分を戒めた。かなり熱烈なラブレターと一緒にパネルを贈ったと記憶しているので、それでもお返しをくれた彼女には、義理以上の気持ちがあったのかも知れないと今では思うけれど、16歳の僕は自分の自尊心を守ることに精一杯だったのだろう。2年からは別のクラスになり、話をする機会も無く高校を卒業して、それっきりもう会うことも無かった。
この人生で何度も恋もしたけれど、現在の妻以外のことはもう思い出すことも無いのに、50年近く経った今でも夢に現れ、メランコリーを僕の胸に残す人。彼女ももう65歳。豊かな人生を送ったことだろうと思いたい。